社会保険への加入。会社設立をしたら必須なのか。

2017年 12月09日

会社を設立すると、各種社会保険の加入が必要なケースがあります。
今回は、社会保険に焦点を当て、加入条件や会社の保険料負担についてお話しします。

社会保険の種類

会社が加入する社会保険には、

「健康保険(40歳以上の場合には、介護保険にも加入)」
「厚生年金」
「労災保険」
「雇用保険」

の4つがあります。このうち労災保険と雇用保険を一体として「労働保険」とも呼ばれます。

社会保険の加入義務と適用対象者

①健康保険、厚生年金
健康保険と厚生年金は加入義務が殆ど同じで、株式会社などの法人事業所は強制適用となります。
従業員を雇わず、社長のみの会社であっても、必ず加入しなければなりません。
また、パートタイマーやアルバイトでも、1日または1週の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上である場合には、加入する義務があります。

②労災保険
基本的に労働者を一人でも雇用すると加入しなければなりません。
パートタイマーやアルバイトだけでも、加入することになります。

③雇用保険
基本的に1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用する見込がある人を雇う場合には加入しなければなりません。なお、原則として会社の代表者は加入対象にはなりません。

社会保険の保険料負担

都道府県や年度、業種によって若干異なりますので、例として平成28年10月において東京都内で小売業を営む会社が30歳の正社員を月給30万円で雇った場合を例に説明します。

①健康保険、厚生年金
健康保険の料率は9.96%(労使で4.98%ずつ負担)、厚生年金の料率は18.182%(労使で9.091%ずつ負担)となります。

なお、保険料の計算方法は、給与の額に率を乗じるのではなく、給与などの額に応じて一定の幅で区分された標準報酬に当てはめて保険料を算出します。
標準報酬は、通常は月額給与と交通費1月分との合計額の近似値になるので、簡単に計算すると給与の額の約14%(4.98%+9.091%=14.071%)に相当する42,213円(300,000円×(4.98%+9.091%))を毎月会社が負担することになります。年間では506,566円の負担になります。

②労働保険
労働保険は給与の総額に保険料率(労災保険率+雇用保険率)を乗じた額です。
そのうち、労災保険分は全額事業主負担、雇用保険は事業主と労働者の双方負担となります。それぞれについて説明します。

  労災保険 事業の種類により2.5/1000から88/1000まで分かれています。
  雇用保険 事業の種類により11/1000(会社負担は7/1000)から14/1000(会社負担は9/1000)まで分かれています。

例えば、前掲のとおり平成28年10月において東京都内で小売業を営む会社が30歳の正社員を月給30万円で雇った場合、年間の労働保険の会社負担は次の通りです。

 労働保険料負担:3,600,000円×(3.5/1000+7/1000)=37,800円 

上記①、②で確認した通り、年収330万円程度の社員を1人雇用すると、毎月払う給与とは別に1年間で約54万円の社会保険料負担とが必要となるわけです。

まとめ

以上、お話しした通り会社を設立すると、多くの社会保険への加入が義務付けられます。
そして、会社は、社長や従業員への給与を払うことでそれに応じた社会保険料を負担しなければならず、その負担は税金よりも大きくなることもあります。
事業を行う上で、会社を設立することにはメリットがあります。
ですが、今回示したよう社会保険料の負担を考慮する必要があります。

会社の設立をお考えの場合には、事業計画を練ることはもちろんのこと、会社を作ることにより生じる負担や資金繰りを考え、場合によっては専門家に相談されるなどして検討されることが大切です。

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