2022年 10月25日
混合配当訴訟事件で、最高裁から違法無効と判決された政令規定は、プロラタ(比例配分)計算規定と言われているものです。
このプロラタ計算規定は、平成13年に登場し、平成18年に現在形に変わっています。
混合配当訴訟での当局側の主張では、税務の「資本金等の額」と会計の「資本金」及び「資本剰余金」の合計額とは一般的には一致しないので、法人税法は、資本剰余金の配当では、その原資は資本と利益とからなるものと考えている、と述べています。
税務大学校の公開論文では、残余財産の一部分配と資本の一部の払戻しとを一つの条文に一括して会社清算型の先取りをしている、と指摘しているものもあります。
プロラタ計算導入の理由を追うと、会計の資本には利益が混入されているから、という会計への不信が推測されます。
しかし、圧倒的多数の中小企業の会計の実態は税務会計であり、資本への利益の混入や利益への資本の混入の常態化とはほとんど縁がありません。そういう立場からは、資本の一部の払戻しについて、これを資本と利益に分けることに道理を感じられません。資本と利益との混同の事実がないのに、法令で在りもしない架空の混同の排斥計算を強制する事は、税法サイドからの、利益への資本混入の強制となります。
確かに税法は、資本と利益の混同を厳しく排して、別表五(一)で混同していない資本と利益を確認する作業をさせています。それならば、会計不信の観念に従うのではなく、混同の事実の有無に従うべきです。
課税の先取りなどという恣意がないのなら、税務が、資本と利益の混同を厳密に排していることを前提に、会計に於ける資本(資本金+資本準備金+資本剰余金)と税務における資本金等との比にすればよいはずです。
会計資本が1000万円で、税務の資本金等の額が100万円なら、この比をプロラタの比にすればよいはずです。
500万円の資本剰余金の分配なら、
というプロラタ計算です。