2022年 08月26日
資本金100万円の会社が増資して1000万円にしようとする場合、利益剰余金を資本に組入れるという方法があり、<利益剰余金900/資本金900>という仕訳になります。ただし、税務上は、株主出資部分の資本金等の額と会社稼得利益の利益積立金額とは明確に区分されていますので、利益剰余金の資本組入れを行った場合でも、資本金等の額と利益積立金額に変化はなく、資本金等の額は、増資後であっても100万円のままで、利益積立金額も同じままです。
この様に扱われることになったのは、平成13年の税制改正からで、この改正後の別表五(一)は、利益積立金だけの明細書ではなく資本積立金の明細書にもなりました。
この改正前までは、利益剰余金を資本に組入れると配当可能利益を一旦金銭で分配し、ここで20%のみなし配当課税が行なわれ、しかる後にみなし金銭出資で増資したものと考えられていました。
なお、利益の資本組入れに係るみなし配当課税についても例外があります。平成3年に商法が最低資本金制度を導入し、5年以内に資本金を1千万円(有限会社は300万円)以上にするべきとしました。この時、税法は、この5年間に利益の資本組入れをしても、最低資本金に達するまでの金額に係るみなし配当に対して、これを非課税とするという特例を設けました。
ただし、課税みなし配当でのみなし金銭出資なら、その出資額は株式の取得価額を構成しますが、非課税みなし配当でのみなし金銭出資については、株式の取得価額を構成しないとされました。みなし配当非課税の意味は、その株式の将来の譲渡時に譲渡所得課税で取り返すので、それ迄の課税繰延べ、ということだったのです。
M&Aでの株式譲渡、会社解散、資本の分配などにより、株式の譲渡所得の計算をすることとなるときには、この課税繰延べの履歴が関係することになります。しかし、最低資本金制度の非課税特例の適用を受けていたかどうかは、法人税の申告書や決算書をみても判別できません。平成3年4月~平成8年3月の間に最低資本金までの増資をしている場合は、その可能性が高いと言えます。