2022年 08月23日
「基因」という表現が、税務では良く使われます。「譲渡所得の基因」「山林所得の基因」「不動産所得の基因」「退職所得の基因」などです。
「譲渡所得の基因」となる資産の譲渡とは、土地、借地権、建物など不動産、株式、NFT、金地金、宝石、書画、骨董、配偶者居住権などの資産の譲渡を指します。
そのほか、法人に対する贈与や遺贈、時価の2分の1未満の価額による譲渡も、資産の譲渡とみなされ、「譲渡所得の基因」となる資産の譲渡となります。
「基因」と似た言葉に「起因」があります。漢和辞典には「起因」とは、ものごとが現在の状態になったもと、起こり、「基因」とは、原因、ことの起こり、とあります。多くの場合、「起因」と「基因」は、同義語として解説されており、報道記事も「起因」に統一されています。しかし、譲渡所得の場合は、「基因となる資産の譲渡」のように「基因」が使用されています。
ところで、行政では「起因」と「基因」で異なる使われ方が見られます。
災害や傷病に関する記述では、法務省のサイトに、「東日本大震災等に起因する人権侵害」、厚労省のサイトには、「労災の業務起因性」など、「起因」が使われます。
一方、国税庁のサイトで災害や傷病に関する記述を見ると、住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例で住宅の取得期限や居住開始期限の1年延長を認める「災害に基因するやむを得ない事情」や、「自己の身体の傷害に基因して支払を受ける非課税の高度障害保険金」など、「基因」が使われます。
同じ災害や疾病に関する取扱いでも、法務省や厚労省は「起因」、国税庁は「基因」。税金に関することは「基因」を使用すると思われます。
内閣府では、SNSで児童が受けた被害の報告書に「SNSに起因する」と表現しています。一方、国税庁では、詐欺行為であっても、その「収入の基因となった行為が適法であるかを問わずに課税する」と表現しており、課税する場合は、やはり「基因」になります。
報道記事の「起因」と税金に関する「基因」の使用の違いに注意していれば、まだまだ他にも発見があるかもしれません。