2020年 10月08日
1998年以前には、所得税法や法人税法の要請で、証憑書類を紙の原本で原則7年保管しなければならないとされていました。
ところが、電子帳簿保存法(「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」)の施行により、一定要件を満たせば、「紙の原本を保存」することなく、「電子データでの保存」も可能となりました。書類保存のスペースや倉庫の確保が大変だったことに比べれば、電子保存は格段にコスト減で有用な方法です。
その後も、要件内容の緩和で、「スキャンによる電子保存(2005年)」や「スマートフォン撮影の画像保存(2016年)」とより使いやすいように改正が行われてきました。 2017年にはモバイル端末(携帯電話・PHS及びスマートフォン)の保有率は84.0%を超え、ほとんどの人が簡単にレシートなどの経費資料を写メで保存できるようになっている現状では、どこの企業でも簡単に税務書類の電子化ができるのではと錯覚しがちです。
誰でも簡単に電子データを作成できるからこそ、そのデータが適時・真正に作成されたものであるという証明が求められます。それが、タイムスタンプの付与であり、「一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ(電磁的記録が変更されていないことについて、保存期間を通じて確認することができ、課税期間中の任意の期間を指定し、一括して検証することができるものに限る)を、一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に付すこと」という条件が付いています。 このタイムスタンプを押してもらうために外部認定業者に支払う費用(月額1万円に近い数千円~)がネックとなります。
今年の年末調整から、年末調整手続の電子化に向けた施策が実施されます。会計ソフトベンダー各社も、新たな製品の売り込みに力を入れています。これにより、実際に、従業員側の作業も従前より楽になりそう(=所得控除額の自動計算等)で、大企業では、経費精算業務に加え、年調業務も電子化が加速されるものと思われます。 しかしながら、全企業の99.7%を占める中小企業では、コスト増回避から、従来通りの手作業を選択するケースが多いものと考えられます。