2020年 09月16日
流通業の S 社は、取引先の弁護士から債 務整理と債権の届出を求める通知を受けました(取引先の破産と管財人選任は後日、 判明)。
この取引先からは取引数量の拡大を 持ち掛けられていましたが、自社の売上が 減少傾向にあり今後の収益拡大を期待して 相手の要求を受け入れた中でのことでした。
S 社は、損失の拡大を少しでも防ぐため、現時点の債権額と納品未了の取引を確認しました。
取引先に事実関係を照会し、併せて契約書の取引条項に抵触しないかを確認して新規の出荷を止めました。
契約書に「無催告解除」「期限の利益喪失」条項があったので契約解除も直ちに可能でした。
保証金や預り金は手許に留保し、債権との相殺の 検討のため、自社の顧問弁護士に債権保全・債権回収など法的手続きを相談しました。
裁判所に破産手続開始の申立てがあった時、個別貸倒引当金の計上により、債権金 額の 50%について先に損金処理できます。
財産の換価処分、債権者への配当が終了 し、破産終結決定がなされたとき、個別貸倒引当金は一度戻し入れ、回収不能となった債権額(破産終結までに配当を受けた金 額、保証金・預り金、保険金等で填補された 金額と相殺後の金額)について貸倒損失を 計上し、損金処理できます。
なお、破産手続きが終了したかについて は、破産管財人に照会すると良いでしょう。
貸倒れリスクを抑えるには、新規に取引 開始の際、与信枠を設定して定期的に見直す、取引信用保険の付保や保証金を預かるなどにより、リスクの範囲を限定できます。
営業担当者は、日頃から相手先の事業場に足を運び、会社の状況を感じ取る、社長は、取引先の経営者とコミュニケーション をとるなど、損失を抑える措置となります。
災害により被害を受けた取引先の復旧のため売掛金の免除等を寄附金としない措置は従前からありますが、今般、新型コロナ ウイルス感染症も災害に含まれることになりました。