前期末利益積立金がマイナス
でも配当可能は日本でも同じ

2022年 10月19日

配当直前利益積立金がマイナスでも

 最高裁で、法人税法の趣旨違反、委任範囲の逸脱違法として政令の無効という判決が出された、混合配当事件では、配当直前の「利益積立金額」がマイナスの状態でありながら、巨額な利益剰余金の配当が行われていました。
 これについては、米国デラウェアLLC法がそれを許容している特殊事案と指摘する説明が多いようです。

日本の会社法の規定と税務申告

 日本の会社法では、臨時の決算書の作成を可としており、分配可能額は、その臨時の決算書で算定されるものによるとしています。前期末時点の利益剰余金がマイナスだったとしても、臨時の決算書での利益剰余金がプラスで、分配可能額が算出されるならば、その範囲での配当は可能です。
 ただし、この臨時の決算をしたからと言って、それに基づく中間税務申告をする必要は必ずしもありません。まして、臨時の決算が、6ヶ月経過時点のものでないとすれば、中間申告の要件に合致しません。6ヶ月経過時点での臨時の決算書が作成されたとしても、それを以て中間申告をするか否かは、納税者の任意です。
 会社法上、臨時の決算書を作成する事は、毎日でも可能です。そこで、分配可能額の存在を確認できれば、毎日でも配当可能です。その意味では、日本の会社法もデラウェアLLC法も同じです。

配当直前の「利益積立金額」とは

 ところで、冒頭の判決で違法無効とされた政令で規定する「利益積立金」は、そう簡単には動きません。まず、利益積立金は期末や中間申告書の提出で第一次的に動きます。
 さらにそれ以外の要因で動くのは、法令の定めるところに拠ります。冒頭の訴訟での配当をしたデラウェア法人の場合、配当原資たる利益剰余金は巨額にあるものの、利益積立金は前期末のまま変動していません。期中での受取配当金などなどは利益積立金期中変動要因から除外されているからです。
 受取配当金があり、会社法による臨時の決算をし、配当を実行して、中間申告書を提出していない場合の「利益積立金」は、前期期末時のものになっても不思議ではありません。