2022年 06月09日
最高裁判所は昨年3月11日、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当が行われた場合、変動する資本金等と利益積立金との金額の比例配分計算をする算式を定める政令規定が、法人税法の趣旨に反する結果をもたらす場合があり、その場合には、政令の計算規定は、違法・無効であると、判示しました。資本の分配額の計算の中に益金不算入のはずの利益が混入する結果になる、との指摘でした。
国税庁は、10月25日、違法・無効と判示されていることを受けて、計算規定である当該政令について、配当原資とされた資本剰余金の額を超過してしまうような計算結果をもたらす場合、その超過部分は違法無効なのだから、ゼロとする取扱いになる、と公表しました。さらに、平成4年の税制改正項目として税制改正大綱でその政令規定の改正を表明し、今年改正されて、すでに施行されています。
資本金5000、資本剰余金1000、利益剰余金1000、利益の配当500、資本の配当500として、これを新政令規定で計算すると、1000×6000÷7000=857>500となり、資本の配当額を超過するので、857は500に改められることになります。
資本金5000、資本剰余金1000、利益剰余金△1000、資本の配当500として、これを新政令規定で計算すると、500×6000÷5000=600>500となり、資本の配当額を超過するので、600は500に改められることになります。
利益の資本組入れ、資本による欠損補填、自己株取得など、会計では資本と利益の峻別が甘いのに対し、税務ではこれを厳格に区分して、会計での甘さをカバーし、それを担保するシステムを構築しています。
また一方、税務でも、資本の払戻しという資本取引に対し、平成13年に、清算概念を取り入れ、株主拠出資本のみならず利益の清算分配もされているとの取扱いにしました。これがプロラタ計算と言われる比例配分政令計算規定の発生事情です。これは、資本と利益の混同です。
資本・利益に係る会計と税務の差異を相互に拡大し合っていることが、今回の政令規定違法無効の判決を生み出すことになる震源事情と言えそうです。