2021年 06月28日
例えば、お父さんの所有する自宅建物につき、同居する息子さんがリフォームや増改築を行った場合、所有権の法律関係や税金の取扱いはどうなるでしょうか。
お父さん世帯の居住スペースと息子さん世帯の居住スペースが完全に分離されている形態のリフォームであれば、区分所有登記をすることができます。しかし、そうでない場合は、リフォーム代を息子さんが負担していたとしても、リフォーム部分の所有権は自宅建物を所有するお父さんに帰属することとなります(民法242条)。これを不動産の付合といいます。
このため、息子さんはお父さんに対してリフォーム費用を請求することができます(民法248条)。
もし、このリフォーム費用をお父さんに請求しなかった場合は、「その他の利益の享受」として、贈与があったものとみなされてしまいます(相続税法9条)。でも、お父さんは年金しか収入がなく、働き盛りの息子さんが費用を負担したい……そんな場合はどうすればいいでしょうか。
このような場合、自宅のリフォーム前に自宅の所有権の一部を息子さんに譲渡し、その後息子さんがリフォームを行う方法があります。そして、息子さんがお父さんに支払うべき譲渡代金と、リフォーム代のうちお父さんが負担すべき金額を相殺します。
例えば、リフォーム前の建物の時価が1000万円、リフォーム代が1000万円とした場合、リフォーム前に2分の1の持ち分を息子さんに譲渡します。こうすれば、息子さんが払うべき譲渡代金は建物時価1000万円☓1/2=500万円、お父さんが負担すべきリフォーム代はリフォーム代1000万円☓1/2=500万円となり、これらを相殺することにより贈与税の課税関係は生じないこととなります。
この事例は国税庁ホームページの「質疑応答事例」にも掲載されています。この場合、お父さんに譲渡所得が生じるデメリットがありますが、息子さんにはその他の要件を満たせば増改築の場合の住宅ローン控除を受けられる可能性が出てきます。