2021年 03月24日
対価の支払いに際して、受取者の所得の内容に従い、支払者に源泉所得税の控除と納税義務を課している源泉徴収制度は、税の徴収側にとっては極めて便利な制度です。
源泉徴収漏れや納付遅延の延滞金は支払者側に課せられます。不合理だと思っても、税法規定に従わないと罰金が恐ろしいです。
給料の源泉税は毎月の話なので、徴収漏れはあまり心配ないでしょう。たまにしか出てこない取引で、しかも相手先も源泉徴収制度についてよくわかっておらず、請求書に源泉税の記載がないとしても、源泉徴収義務のある支払であれば、支払者側に徴収と納税義務が残ります。副業形態だったり事業を始めたばかりだったりの個人事業の外注先やデザイナーなどは要注意です。
源泉税の控除漏れがあっても、相手先が今後も取引のある者であれば、返金や次回の支払額から差し引くなどして、支払者側での負担を回避することができます。しかしながら、相手が一度きりの取引の外国の取引先であれば、「そんな日本の税法なんて知らん」として返金を無視されてしまう可能性も高いです。そうなっても源泉徴収義務は消えませんので、支払総額はグロスアップ計算で125.66≒100÷(100%-20.42%)に膨らんでしまいます。
外国送金時には、源泉徴収義務の有無を事前によく確認して、適切な対応(=必要な場合、源泉徴収と納税)が必要です。特に、著作権の使用料(=ソフトウェア使用料など)や不動産の貸付や譲渡にかかる支払で源泉漏れが起きやすいので要注意です。
支払先が居住者となっている国と日本との間で租税条約があり、源泉税の減免が規定されていれば、事前の手続きで、減免されます。しかしながら、手続きは面倒です。受取側が書類を用意して支払者の受付印を押した届出書を支払者の所轄税務署に提出します。受取者の居住者証明の原本の提出が求められるとさらに面倒です。
相手先には、「日本の税法で源泉税の徴収・納付が規定されているので、送金は源泉税を差し引いた残りとなる」と連絡して終われればよいのですが、相手先との契約や関係でこうした書類の面倒まで見なければならないこともあります。
こうした取引がある場合、事前に税理士に要相談です。送金後の回復は困難です。