2020年 12月16日
経産省は、持続化給付金の不正受給について、給付金の詐取による逮捕者が増加してきたことを踏まえ、自主的に返還された場合は、加算金のペナルティーを課さない方針を示しました。課税上の取り扱いはどうなるのでしょうか。
持続化給付金の不正受給は、刑法の詐欺や民法の不法行為に該当します。
税法では、経済的利得についてすべて課税する包括的所得概念のもと、不法利得についても現実に収入したものは課税することとしています。これは不法利得が自己の処分可能な状況に置かれ、管理支配されている以上、無効な所得であっても担税力を認めることによります。
それでは不正受給の指南役に報酬を支払った場合、必要経費となるのでしょうか。法人税法には、隠ぺい仮装行為に要する費用の額や隠ぺい仮装行為により生じた損失の額は、損金の額に算入しないとする規定があります。所得税法には明文の否認規定はありませんが、実務上、経費算入が認められる余地は少ないものと思われます。
無効な所得は課税されるにもかかわらず、違法な支出の経費性を認めないというのは、割り切れないものも感じます。指南役への報酬は、収益獲得に要した費用であり、事業関連性もあるとも言えます。
持続化給付金を自主的に返還した場合は、どのような取り扱いになるでしょうか。
受給した年度と同じ年度に返還されるのであれば課税されることはないものと思われますが、税法の所得概念からすれば先に申告納付させたうえで、給付金の受給が無効となったときは更正の請求によって返還を求めさせる措置で対応することになります。
経営不振や生活不安から不正受給をしても課税されるばかりか、犯罪行為に手を染めることにより、社会的な信用が毀損され、事業継続性や雇用継続性も失われることになりかねません。日頃ガバナンスを利かせる事業運営をするとともに、社員が落とし穴にはまらないよう注意喚起も必要ではないでしょうか。