副業が事業所得となる基準

2022年 11月02日

副業の事業所得と雑所得の区分について、国税庁は、令和4年8月に実施したパブリックコメントの結果を公表し、あわせて税務の取扱いを示す通達を改正しました。

帳簿の記録と保存が必要

 寄せられた約7,000件の意見に対し、国税庁が示した基準は、収入金額にかかわらず、帳簿の記録、保存があれば、一般的に、営利性、継続性、企画遂行性を有しているので、概ね事業所得になるとしています。パブリックコメントでは、収入金額300万円以下の副業は、反証のないかぎり雑所得としていましたので、300万円基準がはずされたことは朗報です。

社会通念上、事業と称するに至る程度

 しかし、改正通達では、帳簿の記録、保存がされたとしても、「社会通念上、事業と称するに至る程度」で業務が行われていることとする基準は残されています。
通達の解説には、次のような場合には、事業性を認めるか、個別に判断するとして2つの事例をあげています。
① 収入金額が僅少と認められること
 例えば、副業収入が、概ね3年間、300万円以下で、主たる収入に対する割合が 10%未満の場合をいいます。
➁ 活動に営利性が認められないこと
 例えば、3年程度赤字で、かつ、赤字を解消する取組みを実施していない場合、具体的には、収入を増加させ、所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。

節税対策の副業には歯止め

 通達の解説から見える国税庁の意図は、営業活動を積極的に実施せず、わずかばかりの収入を事業所得の赤字として申告し、給与所得と損益通算している場合、これまでどおり、税務署が事業性の有無を個別に判断する姿勢を示したものといえます。

積極的に副業に挑戦する人には追い風

 一方、副業で自分のスキルを積極的に活用し、営業活動をしている人には、すぐに収入がなくても、事業性を認める是々非々の姿勢を示したものと思われます。
岸田首相は、5年間で1兆円を投じる「人への投資」を掲げ、転職、副業の受入企業への支援を新設、拡充し、リスキリングから転職まで一括で支える制度の創設方針を示しました。積極的に副業に挑戦する人には、追い風となるのではないでしょうか。